離島引越し便ブログ

【離島アフターコロナ】地方への企業誘致12のヒント|「人生に離島を」コラム

離島アフターコロナ地方創生

離島引越し便の池田です。

緊急事態宣言は解除されましたが、県をまたいだ移動や大規模イベントの自粛要請は続いています。

先日長崎新聞様から「地方で創業する」ことに対して電話取材を受けましたので、取材を通して考えたことをコラムに残しておこうと思います。よければご覧下さい。(読み終わるまで5~8分)

(前置き)

現在都心では、コロナ自粛の影響で、都心部を離れて地方や離島に仕事を移そうとする動きが増えているそうです。

もともとコロナ以前から、地方への移動を推奨する社会の動きはありましたが、アフターコロナでは一層加速するとされています。

そんなアフターコロナの動きに先駆けて、アイランデクスは地方での事業作りを進めています。その一つが、20202月に開設した五島列島・福江島の「離島引越し便・五島営業所」になります。

長崎新聞様からの取材では「なぜ五島という場所で創業をしたのか」という質問をいただいたのですが、なぜ自分たちは五島をチョイスしたんだっけ、、、と、理由を思い出すきっかけになりました。アイランデクスが五島で事業作りをすることになった経緯は、「これから都心の企業を誘致したい離島地域」にとってヒントになると思い、記事にしてみました。

※「誘致」という記載をしてしまっていますが、「呼び込みたい」くらいの意味合いで捉えてもらえたらと思います!

離島引越し便が、五島で事業をすすめることにした12の理由

まずは、必要不可欠だったなと思う理由ベスト5を記載します。

(1)一番の理由は「人」が僕らと地域を繋いでくれたから。

決定的な理由としては、様々なキーマンが地域と繋いでくれたからに他なりません。

・奄美の勝さん(五島の引越しも困ってるという情報を教えてくれました)
・当時総務省の塩川さん(その五島での実情を教えてくれました)
・ビジネスインサイダー、ワーケーションのみなさん
・市役所の皆さん(なんども相談に乗っていただきました)
・ふとんバーのふーさん
・セレンディップホテルの山家さん
・メロン農家の八代さん
・ソトノマ有川さん桑田さん
・永田さん
・廣瀬さん
・五島の有名飲食店「心誠」の佐野さん
などなど

出会った方々のススメや情報のおかげで五島に営業所の根を張る決断に至りました。

【これから都心の企業を誘致したい離島地域の方に向けた考察】

関係人口。どういう関係をつくっていくかは設計が必要だと思います。私の場合は「五島で引越し会社は必要か」という問いをもって、島の人に会っていたのでそれを肯定してくれて応援してくれる人たちに会えたのがきっかけでした。「その島がどんな地域課題を抱えているのか」を来島者に知ってもらって、一緒に問題を解決する関係者になってもらう、そんな取り組みが中長期的に必要かもしれせん。

(2)ワーケーションイベントがあったから。

「人」と出会うきっかけになったのは、ワーケーションイベント。

2019年5月と2020年1月に2度参加させていただいた五島ワーケションのイベントはとても価値のある内容でした。参加者も特殊なバックボーンのある方ばかり。都会でもきっと「仕事ができる」属性の方々ばかりの中に、ただの引越し会社の私も参加させていただいたのですが、五島の空気と混ざりあって良い思い出の残るイベントになりました。五島の地域の方々と交流する仕掛けも盛り込まれていて、とても練られたイベントでした。

 

【これから都心の企業を誘致したい離島地域の方に向けた考察】

アフターコロナでは、地方でのワーケション熱がまた湧き上がると思います。すでに私の周りでも、夏には地方でブロガーのイベントをしたいとか、企業合宿をしたいとかの声も。

ワーケーションは難しく捉えず、「仕事合宿しながら、地方課題解決」と認識してもらっていいと思います。島に住んでいると信じられないかもしれませんが、旅をしてる最中でもわざわざ仕事をしたいという人とか、旅をするならその地域で役に立つ仕事をしたい!という人とかが、かなり居ます。

そういう地域課題に興味がある人たちを呼び込むにはワーケションはいい手段だと思いますので、ぜひご検討ください。

地方に、ワーケションを主催するノウハウや体力がなくでも、ワーケーションを行政と組んで取り組みたい企業やメディアも多いと思います。五島のときもメディアのビジネスインサイダージャパンがはじめは主催でしたし。考えることは多いですが、やりきれば効果が見込めるイベントになると思います。私もどこか他の離島でも行われるなら参加したいです。(今年はうちもどこかと一緒に共催しようかな)

(3)市役所の推進力があったから。

五島市役所は市役所でありながら、ビジネスチャットのSlackを導入してたり、ワーケーションを主催してたり、離島の行政とは思えない柔軟な取り組みをされています。

その市役所のサポートにより、事前の調査をスムーズに進めることができました。

弊社が地方に拠点をおく上で、ぜったいに調査することが、既存企業を廃業に追いやったり仕事を奪ったりしないかという点です。そして、できるなら協業先も探していました。

そのことを市役所の方々に相談すると、こころよく島の運送業者さんのリストを作成してくれて、一緒に紹介して回ってくれました。

かゆいところに手がとどく柔軟な対応をしてもらったことも、これから長いお付き合いができそうだなと思えたポイントでした。

【これから都心の企業を誘致したい離島地域の方に向けた考察】

拠点を移すことを検討している事業者にとって、行政が前向きな姿勢を見せてくれることはとても心強く感じます。相談にきた事業者に対して、「あなたの会社が島に来てくれたら、島の既存企業にとっても、〇〇なメリットがありますね」という目線で、ぜひ一緒にイメージを膨らませてあげて欲しいです。

(4)「分かってる」民間主導のコワーキングスペースがあったから。

五島市にはセレンディップホテル1Fにコワーキングスペースがあります。「分かってる」なんて言うと失礼な表現ですが、地方の行政主体で開設されたコワーキング スペースは「惜しい」ものが多い気がします。ネット回線とデスクを用意したらいいんでしょ?と作って終わりのなんちゃってコワーキングスペースになんども遭遇して来ました。

私がコワーキング スペースを利用する時、そこに期待しているのは、コミュニケーションのHUBとなってくれる「人」がいるかどうかです。セレンディップの山家さんや岡本くんにはいつもお世話になっています。

ラテを注文しながらちょっと会話してると、「池田さん、あそこに座っている人は〇〇な仕事をしてる人で、池田さんとも気があうと思うから、また後で紹介しますね!」みたいなコミュニケーションがこれまで何度となくありました。

そして、コーヒーやラテもめちゃ美味しいです。

(5)若い世代がすでに居たこと。

若者世代がすでに移住しているのは、ゲストハウス雨通宿(うとじゅく)の功績が大きいという話しを聞いています。20代から30代前半の世代がUターン、Iターン含め、すでに何人か島にいました。すでに島に来た若者で盛り上がりつつあって、新しいことを歓迎する雰囲気があることは有難かったです。

また、セレンディップのコワーキング スペースも、20代、30代の若手が集う場所にもなっています。ここで関係が深まれば、後々の採用活動にも生かせそうだなというイメージもできました。実際、五島のスタッフのうち一人は、このセレンディップホテル経由で採用しましたので、直感どおりに進みました。

 

次に、最低限これは必要だなと、必要十分を満たしているか調査した項目。

(6)最低限のネット回線

わざわざ地方に拠点をつくろうとしているくらいなので、多少不便でも許容できるのですが、オンラインミーティングでネットが途切れないくらいにはネット回線が必要だと思っていました。幸い五島市はネット環境は十分満たしていました。

ただ、少し内陸部に入ると、ソフトバンクはまったく役に立たないことがわかったので、即AUに変えました。

(7)本社の大阪から半日3~4時間程度で到着できる距離感

1日の大半を移動に費やしてしまうと生産性が上がらないので、半日で移動が完了するくらいが拠点として最低限の条件でした。大阪から福江島は、直線距離で800kmもあるのですが、アクセスは意外とよくて、伊丹空港から福岡空港や長崎空港経由で、乗り継ぎが良ければ合計3時間くらいで到着できてしまいます。

地方での拠点を考える時には、実際の距離が近いかどうかより、移動時間がどれくらいかかるのかが重要だと思います。

(8)家賃がそこそこ安いこと。

探せば家賃が3万円以下で3LDKみたいな物件が結構あります。

実際にありがたいことに、五島の弊社スタッフが住まわせていただいている家もそれくらいお安く借りています。市街地からちょっと離れたら、穴場物件が結構あるイメージです。

どの島でも、物件探しは人づてが基本だと思いますが、他の島に比べたら、探す難易度は低めだと思います。根気強く人にあって行けば見つかると思います。(宮古島は最初本当に見つかりませんでした。「無い」の次元が違いました)

ただ、弊社は若い男性スタッフが移住することになったため、家探しは、安ければ良いという基準で探していました。今なら女性の移住なら「本山ヒルズ」さんなどのような、家電付きで綺麗な物件の方が良いと思います。

 

必要十分だが、あってくれて嬉しかったもの

(9)ナイトレジャーとしてのスナック文化の充実

日中は基本仕事のため、情報交換や人と話すのは夜になります。地方すぎるところだと、ナイトレジャーがほぼ存在しない地域もあると思いますが、福江島は福江や富江を中心に、スナックがしっかり残っています。都心ではスナックと聞くと、年配者が通う店のような印象がありましたが、島では若者が当たり前のように通っています。

こういうナイトレジャーが残っていることは、かなり加点ポイントでした。

(10)食事が美味しいこと

食の美味しさが決断の後押しをしてくれました。

なぜかわからないけど、野菜も肉も美味しい。土や風がいいからでしょうか。五島といえば魚のイメージでしたが、いまではわざわざ焼肉を食べに行くことの方が多いくらいです。五島牛恐るべし。

(11)移住者への補助金

五島の補助金についてはこちら

とくに、奨学金の返済に関する補助金は強力だと思います。他の補助金は子供がいたり結婚してたりの要件がありますが、奨学金に関しては比較的要件も広めです。

(12)面白いビジネスが育つ土壌があること

ゲストハウス雨通宿のふとんバー(布団屋さんのバー)や、人生の三冊に出会える さんごさん、最近ではウェディング事業もはじめたらしいTe to ba<手と場>さん、ばらもん揚げをカジュアルに展開する浜口水産さん、かんころ餅や加工食品を作っているごと株式会社さんなど。小さな島に独自の進化をした店や会社があって、面白い会社が多いと思いました。

(その他)逆に競争力にならないと思っていること

「自然の美しさ」とか「何も無いこと」は、競争力にならないと思っています。美しい風景や、ほっとする空気は、個人的にはとても大事にしているのですが、それは都心と比較して時間がゆっくり流れていると感じるだけで、他の田舎の地域と比較したときには大きな差別化にならないのではと思っています。

 

離島地域の方、これから離島創業を考える方へ

離島地域の方へ。12のヒントを通して思うこと

こちらあげたヒントは、並列ではなく、全て「人」の育成・関係性をつくることに帰結しているともいます。関係人口といっても何をしたらいいかわからないという方へのヒントになれば幸いです。

これから離島創業を考える方へ。

いろんな背景で離島創業を目指す方がいらっしゃる方がいると思います。日本全土や世界を相手にビジネスをする業態だから拠点がどこでも良いとか、釣りが好きだからとか、人に触れ合ったビジネスがしたいとか。島は狭いコミニュティゆえに、悪評が広まるのも早いです。ただそれは、誠実にお付き合いすることで多くは解決すると思います。

最後に。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

都心の企業を誘致することで、雇用や産業を産もうとしている離島も多いと思います。
弊社も五島に事業を作って、すでに3名を雇用しています。

 

この記事ては資本金350万円程度の小さな会社であるアイランデクスが地方創業する上で大事にしたことをまとめました。

我々は、地域に大きな変革を起こすほどの力はまだまだないので、すでに求めるものが揃っていることが開設には重要でした。もっと大きな会社を誘致するなるなら、上の優先順位は入れ替わりがあると思います。

ただ、大きな会社であっても、サテライトオフィスとして始まることが多いと思うので、同じような目線で探される企業が多いと思います。

 

実際に離島で地方創業した一意見として、参考にしていただければ幸いです。

(アイランデクスでは、現在、五島福江島・宮古島・石垣島の3拠点の離島で営業所を開設しています。)

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