離島引越し便ブログ

事業パーパスの原点。「島で最後を迎える」ご夫婦との出会い

昨晩、「ありがとう」は祈りの言葉という離島・知夫里島で「看取り」の場所の日常を切り取った本を読んで、お盆に思い出したストーリーがあったので、共有させてください。

「島で最後を迎える」夫婦との出会い。

アイランデクスを創業してまもない2019年に出会った、
忘れられない仕事の話しをしたいと思います。

アイランデクスがお客様から、初めて直筆の手紙をもらった仕事になります。
今思えば、この仕事が今のパーパスや価値観の原点となりました。

それは、島根県の知夫里島(ちぶりじま)に帰ると言う老人のご夫婦の、人生最後のお引越しです。

知夫里島に帰るご夫婦との出会い

そのご老人夫婦との出会いは、大手引越し業者(S社)からのご紹介でした。

S社の担当者から急に私の電話が鳴り「島根県だと思って引越しを請け負ったけど、まさか離島だとは、、とてもじゃないけどできないのだけど、アイランデクスさんなら出来ますか?」とのご相談を頂いたのがきっかけです。

知夫里島?当時の私はまだ離島の知識に乏しく、知夫里島の場所さえすぐにはピンとこなかったのですが、直感で引き受けてみることにしました。

ちょうど奄美大島や宮古島のような大きな離島だけでなく、もっと不便で困っているお客様との出会いを求めていたところでした。

「なんとかします!」と二つ返事でお仕事を引き受けたことを覚えています。

そのご夫婦は、メールがご利用できないようで、電話のお声も遠かったこともあり、三重県まで直接ご訪問して引越しの段取りを調整することになりました。

お部屋の中に通されて意外だったのが、アメリカンな家具と、ご老人ながらにゆったりと構えるお人柄。なんでも、ハワイに住んでいた時期もあるとのことで、70代か80代だと思われるのに、背筋が伸びてお元気そうな方でした。

「あなたはなぜ離島に?」

いつも私がご訪問してお伺いするのが、「なぜ、離島に行くのですか」という質問です。

引越し会社としては、相手の人生に立ち入るような質問は、本来タブーとされるのかもしれません。

でも、相手の人生に触れてこそ、仕事の精度が上がると信じていますし、運ぶ荷物に思いが乗っかるものだと思っています。

だから、この質問は、創業以来欠かしたことがありません。

余談1:

「なぜ離島に」と、行動の原点を聞くことで、お互いの理想の世界観を共有できます。この質問を通したやりとりがきっかけで、弊社に関わってくれるようになった仲間も多いです。弊社のありたい世界観(パーパス;離島の持続可能な未来のために、暮らしと笑顔を運ぶ)と、ご自身の理想の世界が近かったり、自分一人で活動するより、会社組織に乗っかってた方が大きいことができたり、チャレンジできると思ったからアイランデクスにjoinしてくれたスタッフがいます。

「最後は島で迎えたいからね」

このご夫婦が離島に帰る理由は、最後の時を迎えるため。
そのために、生まれ故郷でもある島に帰るのだとおっしゃっていました。

たしかに、老後を生まれ故郷である離島過ごすというお客様は、まれにいらっしゃいます。
でも、老後や余生を超えて、はっきりと”死に場所として引越し”を口にされたのが非常に衝撃を受けました。

そして、“最後を島で迎える”ということの凄まじさをこの時の私はわかっていませんでした。

そのことの凄さに気づかせてくれたのが、「ありがとう」は祈りの言葉という知夫里島の看取りの家「なごみの里」のことを書いた本を読んだことがきっかけです。著者は、柴田久美子さん、「なごみの里」を開いた方です。

余談2:

この「ありがとう」は祈りの言葉という本は、自身の死生観を揺るがす素晴らしい本でした。年配者のことを、高齢者ではなく「幸」齢者と捉えることや、生きることの反対が死ぬことではないこと、言葉さえ必要なくなるような臨終の瞬間。誰にでも平等に訪れる死。「ありがとう」の言葉が、静寂の祈りの言葉として、これまでとは違って聞こえるようになります。島の死生観を知りたい方は、ぜひ読んでみてください。

そもそも、知夫里島は、人口600名程度にもかかわらず、在宅死亡率が75%(2004年時点)という、自宅で最後を迎えることが非常に高い地域のようです。

一方で、日本人のほとんどの人は、「病院」で最後を迎えるそうです。日経BPによると、国民の63%が最後は自宅で迎えたいと思っているにもかかわらず、2020年の死亡者のうち、在宅死できたのはわずか15%とのことです。

そんな在宅死率が高い知夫里島だからこそ、ご夫婦が、最後は島で、という考えに至るのは自然なことだったのかもしれません。

引越しは無事完了。6月の新緑の季節でした。

このご夫婦のお引越し現場は、まだ入社したての福井が担当しました。

三重県で搬出作業をしたあと、深夜に5〜6時間程度運転して、朝は車内で過ごした後、
島根県発のフェリーで知夫里島に向かう、片道10時間程度の少々過酷な運行です。

引越し会社でもありながら、アジアを旅する旅人のような弾丸運行が、当時の美学でした。

お引越しから、半年後にお手紙が。嬉しいクリスマスプレゼント。

その引越しから半年後、クリスマスの頃に、ご夫婦からのお礼のお手紙をいただきました。

紫色の便箋に、手書きで綴られたお手紙。

福井からは、引越しが終わった後、宿でやった麻雀が楽しかったとか、軽い報告で終話していたのですが、ご夫婦からは、すごく喜んでいただいていたようです。

お手紙を通して、過去にハワイに住んでいたことや、引越しのあと無事に島生活を送っていること、夢が叶ったことを知りました。

実は、ここまで純粋に感謝のお手紙いただいたのは、私が事業を始めてから初のことでした

離島の物流は、「やって終わり」ではなく、「これから関係性がはじまる」ものなのだと体感しました。

言語化するのには時間がかかりましたが、「リピーター」ではなく、欲しいのは「ファン」なのだ、という考え方は、この出来事がきっかけで育まれてきたように思います。

こういったお客様との出会いを通じて、人として磨かれてきましたし、豊かさについて学ぶことができたことは幸運でした。

お客様への懐に、勇気をもって一歩踏み込んでみたことで、繋がった縁なのだと思います。

今回、そのご夫婦に手紙を出してみました

お盆に自宅の荷物を整理していたら、懐かしくも、このご夫婦からの手紙が出てきました。

お電話してみたところ、電話番号が変わってしまっているようなので、
それならば、と手紙を書いてみることにしました。

手紙の内容はこんな感じです。

お世話になっております。

お元気にされてらっしゃいますでしょうか。
2019年に〇〇様が知夫里島に戻られる引越しでご利用いただきました、
アイランデクス株式会社の池田と申します。

荷物の整理をしておりましたが、〇〇様から頂いた手紙が出て参りましたので、
懐かしく、お返事を書かせていただきました。

お客様からお手紙をいただくなんてことが、実は、当時の弊社にとっては初めてのことでございました。
4年前、ご利用いただいたお引越しは弊社にとっても、
離島引越しの面白さを噛み締めるような転機となりましたし、
お客様からお手紙をいただけるようなお仕事を続けていきたいと強く決心した機会にもなりました。

おかげさまで、スタッフも50人ほどに増え、いまも楽しくお仕事させていただいております。
もともと大阪であった本社も、福岡に移転し、ますます離島への距離が近づいております。
〇〇様からいただいたお手紙やお気持ちは、これからも大切にしてまいりたいと思っております。

また近々、知夫里島にも寄らせていただきたいと思っています。
よければ、またお電話かお手紙いただけますと幸いです。

さてさて、お返事が来ると嬉しいのですが。

また続報を書けることを祈っております。

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